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500年のラブレター。

西暦2517年。赤道直下の大きな島で暮らすあなたへ。

 

 これを書いているのは西暦2017年。

地球はこの時、世界のあちらこちらで崩壊の危機を迎えています。豊かなジャングルやマングローブの森が世界各国で切り倒され、どこまでも続くパームヤシ林や大豆畑や牧場に姿を変えていっています。

ジャングルの野ブタ、サル、魚、果実、薬草、マングローブのワニ、魚、貝、鳥は姿を消し、その恵みを享けてずっとそこで暮らしてきた人々は生活の術を失い、時には危険な森林伐採に従事しなければ生きていけない、という状況が生まれてもいます。もちろん、彼らはそんなことを望んではいませんでした。

 

そして、あなたの国で伐られた大木やマングローブの半分以上は北半球にある日本という国に運ばれていきます。

日本という国は世界で最大の木材輸入国で、この森林破壊の連鎖を、ODA(政府開発援助)というお金を使い国策として40年以上に渡って進めてきており、それは今現在も変わっていません。

なぜか。それは、お買い得な(つまりは人々の欲望を刺激する低価格の)建材、家具、紙原料が欲しかったからです。それは、巨大なビジネスを生み、これを止めることは経済成長を止めることと等しいと経済界は引き返す道を失ってしまっています。ですので、その原料がどこから来たかを国民に知らせず、国民は知らないまま、あなたの国の木で作られた住宅や家具や紙を(安いので)浪費する、という暮らしを続けてきました。

 

 これを書いている僕は現在、54歳。大酒飲みでヘビースモーカーで、女好きで、怠け者でかつ木工も仕事にしながら「技術が2(10段階評価では3となります)」という「ダメ子ちゃん」です。そして、僕自身も日本人であり、少し前まではこうした事実を知らずに生きてきたのです。

でも、こんな僕でもできることがありました、きっかけは、僕の溺愛する幼児、でした。その子と「かじか獲り」を楽しんだ清流。この河には、書き切れないほどのエピソードがあり、だからこそ、何としても受け継いでいきたい河でした。

しかし、村の古老が言います。「昔は、今の倍の水量があつた。」どういう事?と調べていくと、そこには森の問題があり、周辺の森が荒れることで、河のチカラが弱っていたのです。そして、この時点の日本において森が荒れるということは、伐採されることではなく、大量に植えた木を使わないことであり、森が過密な状態にあることでした。

 

 ここから、僕と森のおつきあいが始まります。この木々を使うことを仕事にしようと思ったのです。そして、その仕事を始めてから、さらに色々と知っていきます。この清流の周辺だけでなく、日本全体が同じような状況にあり、あろうことか、日本は世界の御三家に入る森林大国だったのです。その国が、世界最大の木材輸入国として、あなたの国の森を壊している…。

いつしか、僕は小さな清流だけでなく、日本全体の森を背負っているような気持ちになり、やがて、500年後のあなたに想いを馳せるようになりました。「これは、あなたにとって、どうなのか?」そして、それを広げていくために「このやり方は、日本全国で再現性があるか?」それを基準に行動するようになったのです。

溺愛する息子を思って行動すること。500年後のあなたを思って行動すること。それが、誰でもできる森のお手入れ「きらめ樹」の原点です。

 

それは、決してストイックなことではありませんでした。あなたを想い、それを軸に生きていくこと。それは、僕に思いがけない宝物を与えてくれました。

自分を認め、自分を愛する心、です。どんな駄目な人間でも、未来のために行動することができる。そして、今、自分はそれをやっている。それは、揺らぐことのない自己承認へと結びついていったのです。

どんなに批判されようとも「こんな僕にも、ここまではできる。皆さまなら、もっと上手におやりになれる筈です。」そう、スパッと言い切れる気楽さ…。それは、あなたに対して一点のやましさもない、ということを行動の軸にしてきて得られた、思いがけぬ副産物でした。

 

そして、それが今、広がってきています。「損得勘定」や「欲望」を軸とするのではなく、「愛」と「感謝」を軸に日々を過ごす人が爽やかで透き通った笑顔を振りまいてくれています。

考えてみれば、当然のことなのです。「お買得」な買い物をして、得をするのは自分だけ。

誰の役にも立っていると思えず、もしかしたら、そこで苦しい働き方を迫られている人を生んでいるかもしれません。そんな行為を繰り返している自分に、誇りを持てるでしょうか?そんな自分を、心の底から承認できるでしょうか?

せっかく生まれてきたのに、誰の役にも立っているとは思えない自分がいたら、それは、苦しいことですよね。

でも、自分の人生が、500年後のあなたに繋がっている。今日も一日、あなたの役に立てている。そう思えたら、どうでしょう。人生は、「生きるに値するもの」になります。あなたを想うことで、僕はそんな幸せな気持ちを受け取ることができるようにました。

 

 だから今、あなたのまわりには鬱蒼としたジャングルがあり、サゴヤシやタロイモといった常食があり、フルーツや魚、野ブタなどのご馳走がいつもあるでしょう?

そして、10月下旬になったら、日本にきてください。そこには、僕の大切な仲間が想い焦がれた景色があるはずです。赤、黄色、オレンジ、そして所々に深い緑…。錦の紅葉に色づく日本列島です。国土の7割が、錦の回廊。

人間には、こんな偉大な作品を作る力があるのです。一人一人の小さな力って、捨てたもんじゃないでしょ?

 

 あなたを乗せた飛行機が錦の日本列島上空を舞う日を、その遥かな高みの天空から「そろそろ、来るかな?」とハラハラ、ワクワクしながら楽しみにお待ちしております。

 

 500年後のあなたへ。愛と感謝を込めて。

 

NPO法人森の蘇り 理事長  大西義治
          副理事長 難波清芽